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プラマイゼロ±のマー坊様からSSをいただきました!⊂(*´∀`*)⊃
 
マー坊さまに「ガン攻めまこちゃん」を見たいとリクエストさせていただきましたところ、素敵なSSをいただきまし
た!!!1
ガンガン攻めるまこちゃんにタジタジな亜美ちゃんがすごく可愛いです(・∀・)
そして一夜のアバンチュールのような雰囲気に読んでいてドキドキが止まりませんでした///
 
 
マー坊さま、素敵なSSを本当にありがとうございました!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
        ****************************
 
 
 
 ―月に導かれるように。
 
 
 もう夏休みも目の前で、日中はそれこそ溶け出すように暑い。しかし月が姿を
見せる頃にはその暑さ
もどこか和いで、夏独特のにおいが空気に溶け出していた。
 しかし涼しいわけではない。それに既に学生が外に出るには非常識な時間では
あったのだけれど、月
があまりにキレイなので外に出たかった。色濃い藍を溶かしたような夜空には、
白い月が大きく真円を
描いている。雲さえない。
 まことは月明かりと街灯が照らす道を当ても無く歩いていた。特に目的も無か
ったし、何かしたいわ
けでもなかった。手ぶらで、何も考えず気の赴くままに、ただ歩きたかった。誰
ともすれ違わないし、
野良犬一匹見つからない。どこか静かな夜はまるで死んでさえいるようだった。
自分の呼吸と足音が妙
に大きく耳に響く。
 満月。草のにおい。虫の羽音。蒸すような空気。カチカチと揺らめく街灯の光
。気配の無い、死んだ
ような町。それは、まことを覆い、しかしどこか取り残しているような世界だっ
た。
 
 ぱしゃん。
 
 不意に、幽かに水の跳ねる音がして、まことは我に返った。思わず辺りを見わ
たしてみるが、そこは
住宅と無人の学校だけだ。水溜りさえないし、他にも水音を立てるらしきものは
見当たらない。
 ―気のせいだろうか。
 蒸し暑さのせいだろうか。心のどこかで涼しさを求めてありもしない水の音を
聞いたのかもしれない

 ―或いは。水を繰る彼女に―
 頭に青い瞳の少女が浮かぶ。そして、すぐに首を振って打ち消した。
「・・・帰ろう」
 自分に言い聞かせるように声に出して言った。馬鹿げている。何故、彼女が出
てきたのだろう。そも
そも何故、こんな時間に理由も無く出歩いているのだろう。会いたい、とでも言
うのだろうか、こんな
時間に。
 帰り道を探すため、まことはようやく今いる位置を把握した。自分と仲間達が
通う学校が目の前にあ
る。
「・・・はは」
 なぜか渇いた笑いが口から漏れた。元々転校も多く、悪い噂も絶えなかった昔
と比べて、ようやく見
つけた仲間と安息の地。戦いにうずもれた生活の中でも、それは仲間がいるから
、むしろ穏やかなもの
だった。そして―彼女に会ったから。
 ―ああ。だから、ここに来たのか。
 
 ぱしゃん。ぴしゃ、ぱしゃ。
 
 幽かではあったが今度ははっきり聞こえた。水の跳ねる音だ。耳を澄まして聞
けば、確かに聞こえ続
けている。聴覚を頼りに出所を探る。
 ―学校?
 確かに学校の方から聞こえる。こんな時間に誰かいると言うのだろうか。既に
閉ざされている校門に
近寄ると、塩素のにおいが鼻を突いた。そしてそれがある場所を連想させた。
 ―プール?
 水の音は絶えない。流れる音ならば、蛇口を捻ったのをそのままにしてあると
いうのも考えられたが
、跳ねる音だ。間違いなく何かがいる。―プールに、誰かいるのだろうか。
 こんな夜中、学校に人がいるとしたらただの浮浪者や変質者の可能性が高い。
しかしプールだ。もし
かしたら仔猫か何かが誤って溺れているのかもしれない。或いはまた妖魔か何か
が活動し始めたのかも
しれない。
 いずれにせよ、放って置く訳には行かない。何も無いに越したことは無いが、
気になったのだ。変質
者相手でも逃げるなり退治するなり出来る自信はあったし、猫が溺れているのな
ら助けなければいけな
い。―妖魔なら、尚更ここを立ち去るわけには行かない。決断は早かった。まこ
とはさして高くも無い
校門に手をかけ簡単に飛び越えると、学校の敷地に入った。プールの入り口を目
指して走る。
 夜の学校は思っていた以上に不気味だったが、何故か恐怖は感じなかった。―
近くなる水音。それな
りに警戒しつつ、一応入り口から入る。閉まっていればフェンスをよじ登ろうと
思っていたが、いらな
い杞憂だった。
 
 ぱしゃ。ぱしゃん。ぴちゃん。
 
 近くはあるが静かな水音だった。溺れていると言うよりも―音を出来るだけ立
てないよう立てないよ
う泳いでいる、のだろうか。不安が水音に近づくにつれ薄らいでいく。更衣室と
シャワーエリアを抜け
て、プールサイドに出る。そこで、水音の正体を見つけた。
 まことは、なぜか驚きもしない自分に驚きつつ、冷静に言葉を放った。こんな
月明かりの夜、言うこ
とは一つだ。
 
「やあ、こんばんは」
 
 面食らったのは水音の出し主の方だ。こんな時間に、しかもこんな場所で、ま
さか―まことが。
「ま、まこちゃん・・・!?な、何でここに・・・?」
「同じセリフを返してあげるよ。何でこんな時間に亜美ちゃんは学校のプールで
泳いでるんだい?」
 水面から顔だけ出した亜美は完全に固まっていた。月明かりで、銀糸と見紛う
ほどに輝く水滴を纏わ
せる亜美と、微かに揺れる月影と濃い藍を写した水面。
 ―息を呑むほど美しい。そんな完成した世界を、まことはぼんやりと見つめて
いた。
 
「どうして、まこちゃんが・・・」
「って、それ、亜美ちゃんが聞く?」
 二人でプールサイドに腰掛け、足で水面を揺らしながら語る。亜美は最初こそ
狼狽していたものの、
落ち着きを取り戻すのも早かった。しかし、相変わらず自分のことは語らない。
 ―まあ、確かに一歩間違えれば不審者といて通報されちゃうかもしれなかった
からね。
 夜中に学校に忍び込みプールで泳いでいるなど、どう考えたって不審である。
そもそも、泳ぎたいの
であれば亜美は会員制のスポーツジムが使えたはずなのだ。わざわざ不法侵入し
てまで、こんな場所で
泳いでいた理由が分からない。
「・・・本当、びっくりしたよ」
「・・・あんまり驚いているようには見えなかった」
「ああ、うん。そうだね。亜美ちゃんが泳いでいること自体にはあたし、全然び
っくりしなくて、自分
でそのことにびっくりしたもん。何でだろうね。全然予測してなかったし、どう
考えたって変なんだけ
どさ」
「・・・言ってること、変よ」
「うーん、プール泥棒さんに変とは言われたく無いなぁ」
 じゃばじゃばと足でプールを蹴る。月影が波紋に揺れる。蹴るのをやめると、
また、静かな夜と美し
い満月が戻って来た。
 亜美は唇を尖らせる。
「・・・笑わない?」
「何を?」
 分かっているくせに、と言う抗議が聞こえた。
「理由」
「笑うような理由なの?」
 今度は亜美が水面を蹴り上げた。足に水が絡みつき、舞う飛沫が煌く。彼女は
、本当に水が似合う。
まことは心底感心した。
 亜美はまことの方を向かず、拗ねたような口調で言った。
「・・・呼ばれた、から」
「え?」
 意外な言葉にまことが数回瞬きをする。こんな時間にこんな場所で誰が亜美を
呼び出すと言うのだろ
う。しかも、当然ながら呼び主らしきものは見当たらない。
「・・・誰に?」
 不審さを隠さないまことに、亜美はポツリと言う。
「・・・水と、月に」
「はぁ!?」
 
 亜美の説明はこうだった。
 どうしても―泳ぎたかった。勿論そんなものは理由にならないが。
 母が夜勤でいなくて、塾の帰りに時間を気にせず思い切り泳ぐつもりで水着の
準備をしてきて、そし
てジムに向かう途中に学校の前を通りがかって―
 塩素のにおいと月明かり。そこで、呼ばれたような気がしたのだ。水と月に。
 
 どうしても―月の下で泳ぎたかった。
 
 
 古来より月明かりには魔力が宿っているとされている。特に月が完全に満ちる
夜は、狼男など数多く
の逸話を残すほど力が強い。その光は人を奇行に走らせる。狂人の事を月の名に
準え、「lunatic」と表
現さえする。
 また、ギリシア神話において、水星(マーキュリー)の化身であるとされるヘル
メス。木星(ジュピター
)の化身であるとされ、主神であるゼウスを以ってして、予測できない行動をとる
油断できない神として
記されている。
 水星と月。外見上は似ているとも言われている。が、水星自体は、他の星に比
べ解明が遅れ、未だ謎
が多い惑星である。
 ―いずれもまことの知らぬところではあったが。
 
 ―へんな、ひとだ。
 亜美の説明を聞き正直にまことは思った。夜の学校に不法侵入し、あまつさえ
プールに忍び込み泳ぐ
などおよそ普通の行動ではない。ましてや生真面目な亜美のこと。そんなことを
するなんて思えなかっ
た。
 しかし、現に亜美は「呼ばれた」と言う理由でそういう行動に出ている。
「・・・・は、あははははっ!」
 まことは思わず腹を抱え大声で笑ってしまった。静かな夜に明るい声が響く。
亜美は反射的に顔をあ
げた。暗がりでも頬が染まっているのが分かる。
「わ、笑わないでって言ったじゃない!」
「笑わないとは言ってない・・・ははっ・・・亜美ちゃんて・・・本当、変だよ
ね・・・あはは・・・

「まこちゃん!」
 思わず亜美も大声を出しまことを止めようとする。まことはそんな亜美の唇に
人差し指を押し付けて
止めた。
「・・・静かにしなきゃ、亜美ちゃん。もう遅いんだから」
「・・・誰のせいよ」
「どっかのプール泥棒さんのせいだろうね」
 まことは実にしれっと言った。妙に気分が高揚しているのは、こんなに月明か
りがキレイだからなの
か。
「・・・私のことは兎も角、どうして、まこちゃんまでこんなところに・・・」
 亜美はぷいと顔を背け呟いた。兎に角話題を変えて欲しいのだろう、目も合わ
せずに細々と言葉を紡
ぐ。
 そして亜美の言葉を受けまことは思う。―確かにそうなのだ。心配していた事
象はことごとく外れて
、しかもあの月と水の世界はあそこで完成していたのだ。あの完全で美しい世界
に、自分と言う来訪者
は要らなかった。だから本当はあそこで声をかけるべきではなかったのだろう。
 しかし、分かっていながら声をかけた。そして亜美はまことを厭う様子も無く
、今こうして隣に座ら
せている。亜美に、あの世界に厭われない自信が最初からどこかにあったのかも
しれない。
 
 ―或いは―自惚れでなければ。運命と言うものがこんなところにもあるのなら
ば。
 
 まことは微笑む。そしてはっきりと言った。
「あたしも呼ばれたんだ。月と水にね」
 
 月の魔力は、人を思いがけない行動に走らせる。
 
 まことは、亜美の手を握る。きょとんとした表情を浮かべる亜美に向かい目を
細めると、そのまま、
彼女ごと―
「きゃっ・・・!」
 水に落ちた。
 
 さぶん、と低い音がして二人の身体はプールに沈んだ。暗い水中に無数の銀の
泡が溢れる。二人揃っ
て水面を破って顔を出した。
「ま、まこちゃん・・・!大丈夫!?服・・・」
 いきなり服のままプールに飛び込み、しかも道連れにしたと言うのに、亜美は
咎めるどころかまこと
の心配をした。その優しさが彼女らしい。心配そうな表情は月明かりに照らされ
て、どこか神秘ささえ
漂っていた。
 まことは顔に張り付いた髪を煩わしそうにかきあげると亜美の肩に手を置き、
亜美の耳元で静かに囁
いた。
 
 ―自惚れでなければ。運命ならば。この水と月の世界は、あたしがいても構わ
ないはずだ。
 
「あたし、この世界に似合ってるかな?」
「ど、どういうこと・・・?」
「言ったままの意味さ。あたしは、月に呼ばれて外に出た。水に誘われてここま
で来た。でも、本当は
―全部、亜美ちゃんに会いたかったからだ。全部知ってたんだよ」
 月に呼ばれて外に出た。気がつけば、心のどこかに亜美を求めて学校の傍まで
来ていた。水に誘われ
ここまで来た。水の音が彼女を連想させたから。
 亜美がいても驚かなかったのは、どこかで、きっと会えることを知っていたか
ら。
 置いてけぼりの感覚は、ここに来いと告げていたから。
「い、意味が分からないわ。第一、まこちゃんは私がここに来るって知らない・
・・」
「分からなくていいんだよ。そういう風に出来ているんだ、あたしたち」
 ―待ってていてくれた。月の光が巡り会わせてくれた。
 全く要領が飲み込めていない亜美に対し、まことは歓びを隠そうともしない。
月の光は気分をひどく
高揚させる。そのまま当たり前のようにまことは亜美に口付けた。
「・・・ん・・・」
 一瞬だけ。突然のまことの行動に亜美は慌てふためいて口を押さえた。
「・・・い、いきなり何を・・・!?」
「んー、キス?」
 まことは悪びれない。
「そういうことじゃなくて!こ、ここは学校・・・!」
 ―真面目だ。今更、こんなときでも至極最もなことを言う。そんなところが彼
女らしいのだけど。
「でも夜だし誰もいないし。それに今夜の亜美ちゃんは呼ばれたって理由でこん
な所に来てるんだろ?
あたしも今呼ばれたの、亜美ちゃんの唇に」
 そしてまことはにししと笑うと、逃げ腰の亜美の背中に手を回し―
「それにね?月明かりの下で泳ぐ亜美ちゃんって、すごい色っぽいんだよ?」
「えっ・・・!?ま、まこちゃん・・・!?」
 
 
 
 夜の学校。二人きりのプール。幽かな水の音。暗い水面に浮かぶ重なった影。
完成したその世界を、
ただ満ちた月が煌々と照らしていた。
 
 
 
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