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半年以上空いてしまいました・・・orzorzorz
9000HIT(!)のリクです。



実は、なんとハルキさまからSSを頂いていたのです!
ハルキさまの作品は本邦初披露ということで、わたくしめが僭越ながら挿絵を描かせて頂きま
した。


では皆様どうぞご堪能あれ!




























雨の記憶















―しまったなぁ…

まことは苦笑しながら窓の外を眺める。
眠気をこらえながら授業を受け、それがようやく終わり、
楽しい放課後が待っているはずだった。

雨さえ降らなければ。


―天気予報じゃ、降水確率10%だったのになぁ…


梅雨時ではあるものの、今日の降水確率は天気予報によると10%。
そして先日は久しぶりの晴天であったため、天気予報を信頼して傘を持ってこなかったのだ。
まこと同様にため息交じりに空を見上げるクラスメートの大半は、傘を持っていないらしい。
これ以上ないくらいに迷惑そうな顔をしていた。
それでも、サッカー部や野球部は活動があるらしく、嫌々ながら道具をまとめて
足早に教室を出て行った。

まことは、心の中でごくろうさんと思いながら、他の生徒に倣い、教室を出た。
いつものように、行先は決まっている。
自分の小さな恋人、亜美がいるであろう図書室だ。
亜美のクラスの方が先に授業が終わる事が多いため、まことはよく亜美を待たせてしまってい
る。
亜美はその度に、図書室で勉強をしているのだ。
いつも待たせて悪いとは思いつつも、
ホームルーム終了が遅いのは、別にまことのせいではないので、どうしようもない事だ。
まことにできる事と言えば、終わったらすぐに、図書室へ向かう事だけだった。


図書室なんて、あんまりなじみ深い場所ではなかったのだが、
高校受験を経験し、亜美と親交が深くなるにつれ、段々と入りやすい場所になって行った。
今では、この本の持つ独特の匂いも、嫌いではない。
ただ、読むのであれば、教科書よりも漫画や料理本の方が好きという点は変わらないのだが。


図書室の引き戸を開けると、図書委員会の女生徒がカウンターに座っていた。
チラリとまことの方を見ると、会釈をした。
まことも会釈を変えしながら、もうすっかり、この女の子とも顔なじみだなと肩をすくめた。

すると図書委員の女性とは不思議そうな顔で答えた。

「水野さんなら、今日は来てませんよ」

思わずドキッとした。
いつもなら、必ず図書室に居るはずなのに。
念のために図書室に来る前に亜美の教室に行って
亜美がいないことを確認したはずなのに…

「そうなんだ、ありがとう」

まことは努めて冷静に返したが、思った以上に動揺している自分がいた。
ゆっくりと図書室の引き戸を閉め、廊下に出る。


―やっぱり、なんか怒ってるのかなぁ…亜美ちゃん


普通に考えれば、亜美が一人で帰ることなんて珍しくもなんともない。
クラスが違い、片方の授業が早めに終われば、先に帰る方が当たり前だろう。
だが、まことと亜美の場合、それは当たり前のことではない。
むしろ、一緒にいることが当たり前になっていたのだ。

中学2年生の時、初めてあのゲームセンターで会った時から、
いや、前世、月の王国に戦士として出逢った時から 惹かれていた、のだと思う。

前世の記憶が全てある訳ではない。
断片的に流れ込んだ記憶の破片、そこに浮かんだのは、
冷徹ともいえるブレーンとしてのマーキュリーと、そこに垣間見える優しさを持った、一人の少
女。


―惹かれてたんだろうな、いつの間にか。
 だから、一緒にいたくて、笑っていたくて、傍に居たくて。


なに急に辛気臭くなってんだかと苦笑しながら、まことは頭をかいた。


―雨の、せいかな


雨は、なぜだろう、ふと寂しい気持ちにさせる。
小さい頃から雨は嫌いじゃなかった。
確かに、外では遊べないし、洗濯物も乾かなくなるけれども。

木星が、雷が、嫌がらせないのか―――。



やめよう、と、そこで思考を止めた。
いつまでも過去に浸っている場合じゃない。

とりあえず今は、亜美ちゃんのことを考えよう。


最近、亜美の様子がおかしいのは確かだ。
梅雨に入ってから、特にそんな気がする。
何かを考え込んで、時折何かを言いかけるけど、最終的にはだんまりをきめ込む。
怒っているのか、それともただの考え事なのか。

昔から、悪い癖だと思う。
もう少し、頼ってくれても良いのに。


―そんなに頼りないのかな…


そこで、自虐思考に走る自分をダメだ!と叱咤した。


何で今日はこんな気分なんだろう…
過去に浸るわ、自虐に走るわ、動揺するわ…
とりあえず、帰って頭を冷やそうと階段を降り、靴箱へと向かっていると後ろから声が飛んでき
た。


「まこちゃんっ」


そこには、亜美が立っていた。
少し息を切らして、目を細めながら微笑む亜美。
その表情を見た瞬間に、まことは自分の顔が今まで以上に熱くなるのを感じ、下を向いた。
今までの自分の鬱蒼とした感情をすべて払ってくれるような、優しい声。


―…こういう、何気ない所に惹かれたんだろうな


まことはすぐに顔をあげ、亜美ちゃんと名を呼び、一歩近づいた。

「ごめんなさい、今図書室に行ったら、
図書委員の子にまこちゃんは帰ったってこと聞いたから
すぐに追いかけたんだけど」

「ううん、私も、今行ったところだったからさ。亜美ちゃん来てないって言われたから
もう帰っちゃったのかなって思って。どこに行ってたんだい?職員室?」


そう言って亜美の手にそっと触れた瞬間、その手が濡れていることに気付いた。
よく見ると、体中が濡れている。制服がうっすらと透けているのも分かった。
どう考えても、職員室ではない。

「亜美ちゃん、今まで一体どこに…?」

亜美は少し困った表情を見せ、そして小声で、屋上と答えた。
あまりに唐突な答えに一瞬言葉に詰まるまことを見越して、亜美は言葉をつないだ。


「雨に、濡れたかったの」


それが、答えだった。


少ししてまことは理解し、そうかいと笑って、ハンカチを取り出し、顔の滴を拭いて言った。


「じゃあ、今日は濡れて帰る? 私、どうせ傘ないし」

「それじゃあ、まこちゃん風邪ひいちゃうわ」

「大丈夫だよ、亜美ちゃんに看病してもらうから」

「…ばか」

くすくすと笑いながら、二人は靴箱へと向かった。



結局その日は、亜美の折りたたみ傘を二人で分け合いながら帰路につくことになった。
まことは最後まで濡れたがっていたが、亜美はかたくなに拒否をした。
風邪をひいても、絶対に看病はしないと強く言うと、ようやく納得し、おとなしく傘に入ったのだ。
二人が帰路に着くころには、雨はいっそう強くなっていて、
折りたたみ傘程度の大きさを二人で分け合っていたため、互いの肩はとうに濡れてしまってい
たのだが。



「やっぱり、水に触れていたいものなのかい?」

あと10分ほどでまことの家に着くというところで、まことが唐突に切り出した。
亜美はその質問を予期していたのか、それでも少し複雑そうな表情のまま、そうかもしれない
わねと呟いた。

「子供のころから、少なくとも物心ついたころから、水が好きだったわ。
子供の頃の雨の日なんて、みんな嫌がるものでしょう?遠足や体育が中止になっちゃうから。
だけど私は、雨が好きだった。
この地球に生きているものすべてに平等に降り注ぐ雨が好きだったの」

そう語る亜美は、優しく微笑んでいるのに、どこか寂しそうで。


「でも、時々思うの。こうやって、雨を、水を好むっていう事は…
やっぱり私は水の戦士で、水星の守護神で、マーキュリーなんだって」


その時、まことは先ほどの質問を後悔した。
抉った気がした。
一番、触れてはいけない領域に、土足で踏み込んだ気がした。

ようやく気が付いた。
最近、亜美が寂しく俯く理由。

自分と同じだったのだ。


戦いがすべて終わったなんて、100%の確証はあり得ない。
いつまた、あの戦いの日々に巻き込まれるかもわからない。


そして、私たちは『戦士』だから。

傘を持つまことの手が震えた。
隣を歩く彼女の、小さな双肩に課せられた宿命は、決して捉えて離さない。



―それが、前世からの運命だから?




今、まことの瞳に映る少女は、マーキュリーなのか、亜美なのか




そこで亜美はハッとして、顔を上げた。

「ごめんなさい、急にこんな話ししちゃって…」



全てを言い終わる前に、まことは亜美を抱きしめた。
強く。そして優しく。
震える自分を抑えるかのように、黙って。
泣きそうになる自分を押し殺して。


「まこちゃん……」


「亜美ちゃんは、亜美ちゃんだよ」


豪雨にかき消されそうな、小さな声で、囁いた。

「前世も未来も関係ない。今、私の目の前に居るのは、亜美ちゃんだよ」



それが、まことの精一杯。
宿命だろうと、運命だろうと。戦いの渦中に飲まれようと。

此処に居るのは、自分が好きになったのは、
『木野まこと』が好きになったのは『水野亜美』なんだと。

ただの、強がりかもしれないけど。



「うん…」


亜美は、まことの胸に顔を埋め、静かに泣いた。
そっと、抱き返す両腕は、小刻みに震えていた。


それでも。


これが、この人の優しさだから。
私が好きになった、まこちゃんの優しさと強さだから。



ありがとう


そう呟いた声は、豪雨にかき消された。
雨はいつまでも、二人を濡らし続けた。







































なんとも切ないSSでしたね・・・(・ω・`)
前世のしがらみに苦しむまこ亜美でした。


ハルキさま、とても素敵なSSを本当にありがとうございました!